ある日, 星宮いちごは弟のらいちがトップアイドルの神崎美月のファンであることを知る. 美月のライブに行きたいと願う弟のためにアイドルに詳しい親友の霧矢あおいに相談すると, あおいの伝手により幸運にも3人分のライブチケットが手に入った. 美月のライブでいちごは感銘を受け, アイドルを志す. そんな折, あおいはいちごに美月も在籍するアイドル養成学校の「スターライト学園」の編入試験を受けることを伝え, いちごにも(半ば強引に)受験しようと持ちかける. 母の応援もあり受験を決意したいちごはあおいと共に努力を積み重ね, 入試のライブオーディションでスペシャルアピールをするまでに成長する. めでたくいちごとあおいは編入試験に合格し, スターライト学園での生活が幕を開けるのだった.
今話は後話への環境を整える役割もあり, 時間の経過がおそらく後の話に比べたら急なのではないかと思いますが, その割にいちごの感情の変化が丁寧に描かれていると感じました. いちごの家は弁当屋「Nandemo Bento」を切り盛りしていて, いちごとらいちは日常的に母のお手伝いをしています. いちごは, 自分の夢を見つけてほしいと聞く母親に「(母親と)一緒にお弁当屋さんをするのが夢」と伝えておきながら, その期待を裏切りアイドルを目指して良いのかという葛藤します. おそらく母親にも, 自分がいちごに手伝いばかりさせており, いちご自身が好きなことを見つける可能性を狭めていることに対する罪悪感があったと思います. 「一生にお弁当屋さんをするのが夢」という娘の台詞に対しても, 自身がそう返答するように育てているのではないか, という疑念もあって素直に喜べてはいないと予想します. そんな時に「アイドルを目指す」という娘の夢を知った訳ですから, 母親としては嬉しかったでしょうね. これは個人的な体験ですが私が両親におそらく両親の期待を外れた道をゆくと伝えた時, 両親はそのことが嬉しいと言ってくれました.
編入試験でスペシャルアピールを披露したいちごを見て, 私はやはり(あおいがいちごに対して「アイドルのにおいがする」と言ったように), いちごには才能があって, こうしてすんなり物語が進行するのかと卑屈になっていましたが, その直後, 理事長(学園長でしょうか, 現時点では分かりません)「相当努力したのかしら」と言うシーンがあり, ああ, 純粋に, ひたむきな努力の結果なのだと考えを改めました. ライブオーディション前にはペーパーテストや面接で苦戦しているシーンもありましたし, それだけ努力をしても難しい試験なのでしょう(受験者は推定千人, 一人も受からないかもしれない, とあおいが言っていたように). 一方で, 合格発表を見て喜ぶいちごとあおいの周りの受験者の落胆の表情からは, 努力だけでは結果としては浮かばれない場合があることも当たり前ながら認識させられます. しかし, そういった結果はあくまで他人が自分のことを認めた形式的な証であって, 結果を求め積み重ねた日々自体こそ己が己を肯定するために必要なものと信じています, その積み重ねが, 自分は自分として生きてゆけるという(あるかは分からないのに, どうしてか)揺ぎ無い実感を与えてくれるものだ, と.
2話以降も楽しみです.
・「残酷な夢が夢で夢になるんだ」というOPの歌詞について, まだ余り考えていませんが, 「残酷な夢が夢で」までが一区切りなのでしょうか? パッと見ると残酷な夢(想像)が, 夢(現実ではない, 起こらないもの)で, 夢(思い描いていた自分の理想)になる(実現する)んだ, ということかと思いますが, これは話を追うごとに印象が変わりそうです. こういう想像の余地がよく残る(よく, という部分を強調しておきます)歌詞が好きです.
・「ハイパーメガハンバーグ弁当」を「メガハン」と略すという事は, 「メガハンバーグ弁当」はメニューにはないということでしょうか.
・これは上の感想に書こうか迷いましたが, 星宮家の家庭事情, つまり今話における父親の不在, は後の伏線なのでしょうか. いちごが洗面台の鏡を前に笑顔を作る練習をするシーンでは歯ブラシが3つしかない(コップは4つ)ので, 「そういうこと」なのかと感じていますが, これはいかにもな理解で宜しくないですね.
・あの有名な(?)「ていうか もう寝よう」は第1話にあったのですね!
・あおいちゃんが「穏やかじゃないわね」とはじめて言った時, めっちゃ興奮しました. うわ, 本当に言った! みたいな……
・らいちとあおいは神崎美月のことを「美月様」と呼び, いちごは「美月ちゃん」と呼んでいます. いちごは美月を, ファンとしてではなく対等に同年代の女性として親近感を持って見ていて, このことはいちごがアイドルのファンになるのではなくアイドルそのものを目指すことからも納得されます. 一方であおいはどうなのか, あおいはどうしてアイドルになろうとしたのか(もちろんファンとして活動するためアイドルに近いスターライト学園に編入しようと思うのは自然ですが), 後話で明かされるのか気になります.
・あおいについては, 後話で「自分らしさ」に悩む回があるのではないかと予想しておきます.
・次回予告のあおいの「どんな事があっても友達だよ」という不穏な台詞は, アイドルを目指すことで例え親友であっても競争が避けられないことを暗示しています. 私がアイカツの設定を見て気になっていたのもこの部分で, 「トップアイドル」がいるということはトップを目指す競争があるはずで, 競争により交友関係がどのように変化してゆくのか, 2話以降が楽しみです. 幽遊白書では, 100%の力を発揮した戸愚呂弟は幽助を前に「初めて敵に会えた いい試合をしよう」と呼びかけますが, 私はこの競争と交友の距離感が好きです(何の話?).