毎日アイカツ!「第19話 月夜のあの娘は秘密の香り」

(記事作成日時:2021-05-20 23:38:55 +0900 JST)

概要

バラエティー番組の収録後, 夜遅くに学園を歩いていた星宮いちごはマントを羽織った銀髪の少女に首元から血を吸われかける. しかし, おとめから渡された銀のアクセサリーを見た少女は慌てて逃げ去った. 翌日, 担任のジョニー別府からブランド・LoLi GoThiCが主催するロックフェスの出場を賭けたオーディションが開催されることと, そのオーディションの有力候補が同級生の藤堂ユリカであることが告げられる. いちごはドラキュラの血を継ぐ人間と吸血鬼のハーフというキャラを徹底するユリカに感動し, 自身もオーディションに勝つためのキャラ作りを始める. その一環としていちごはユリカを観察しているうち, ユリカも神崎美月の曲を聴いたり, その設定とはそぐわず大蒜の入ったラーメンを食べるなどの意外な一面があることに気付く. そんな中, ユリカは寮の自室でブログ用に儀式の写真を取ろうとして火災を起こしてしまい, 偶然立ち会ったいちごはユリカが大切にしている日傘を部屋から救出する. 清掃員の涼川直人が火を消し止めた後, ユリカはいちごに感謝を伝え, その場のいちごたちに学園に入ってから没個性に悩んでいたことや, 吸血鬼のキャラはファンのために始めたことを告白する. 普段の素顔と吸血鬼のキャラとのギャップに驚いたいちごは話を聞いてユリカのキャラクターが一朝一夕で作られたものではないことを実感し, キャラ作りを止めAngely Sugarで自分らしくオーディションに挑む. 結果は惜しくもよりブランドイメージに合っていたユリカに敗れるが, いちごもブランドの人たちから好評価を得た. いちごたちは, ユリカの素顔は自分たちだけの秘密にしようと誓うのだった.


感想

ありがとう……

今回のテーマはキャラあるいはキャラ作りであったと思います. おそらくアイドルとして生き残るには強烈な個性が必要とされていて, ユリカも学園に入学した当初は周りが輝いて見え, 自分の個性のなさに悩んでいたようです. しかし蘭が「そのままでも十分勝負できると思う」と言ったように, 素顔のままでスターライト学園に合格したのですから, 彼女自身の自身の無さとは裏腹にそのままでも他の人は十分彼女の魅力に気付くとは思います.

こういう事情が一度告白されると, 私のような悪いオタクはキャラクターの性格に二面性があると本音と建前が綺麗に分離していることが多く現実の人間と比して分かり易いため直ぐに好きになってしまいます1. ユリカについてはその二面性は抑圧された部分が分離することで受動的に生じた訳ではなく, アイドルとして生き残り, また自信を持って生きてゆくために自ずから選び取ったものだというところが凄く良く, 魅力的に感じるところです. 最古参の, 素のユリカを知っているファンはこのミステリアスなキャラでブレイクしたユリカの頑張りを知っているでしょうから感慨深いでしょうね……!

私が上に述べた「分かり易さ」というのは, 自分が抑圧されたことによって二面性を持たざるを得なかったという実感を持っており, その経験と重なって共感するということが根拠の一つだったのですが, それはひどい誤解であることに今話を通して気付きました. 上に述べたようにユリカは自ら, しかも喜んでくれるファンの為にもなるからと2つの人格を宿すことを決めたのであって, 私のように嘘と方便を使い分けるような感覚で性格を便利に変えている訳ではないのです. 私はまた共感しようとして誤解を重ねていました. アイカツ!を毎日視聴していて, 安易な解釈を求めないのは(注釈にも書きましたが)大事だと痛感します…….

素のユリカは眉の角度もだいぶ緩やかで, 優しく大人しそうな文学少女といった風ですから, 吸血鬼というキャラクターを徹底するために相当努力したのだろうと思います. その努力はあの美月も気付いているようでした. ユリカが更に凄いのはプライベートまでそのキャラクターを徹底しようとせず, ちゃんと素の自分を持っていることだと思います. これは1つのキャラになりきることより困難でしょう(火災があった際にはキャラが崩壊していましたが……). 個性がないと嘆き, 素では自己肯定感も低くいちごたちを前に謙遜を重ねるユリカでしたが, ファンの応援のおかげもあるとはいえ, こういう事を徹底するには相当の覚悟が必要でしょう. すごい

ところで蘭にもこういう周りの期待に応えるようにキャラを作った一面があって, しかも本当は気配りのできる優しい子という共通点がありますね. 蘭とユリカはそういう面ではとても似ていて, これから良い関係性が築けるのではないのかと期待していますが, どうでしょうか……? 私は既に相当量の妄想を蓄えました.

20話以降も楽しみです. え, 次回でユリカの素がもう周りにばれる感じですか……!?


その他(箇条書き)

・踊るマグロ御殿, 字面が面白い.

・ユリカがいちごに顎クイするシーン, 首筋から血を吸うのになぜ顎を傾ける必要が(いや, でも, ありがとうございます!). ところで, 顎クイという言葉をもう5年は聞いておらずはじめ私が勝手に思いついた単語ではないかと疑ってしまいましたが, 死語でしょうか?

・いちごがキャラ作りのために色々な衣装を着るシーン, どこからそんなニッチな衣装を引っ張り出してくるの……? その後にホログラムと用いていちごとLoLi GoThiCの衣装を重ねますが, 前回はそのためにあおいを脱がしたのに今回は脱いでいませんでしたね(だからどうということではありません, だからどうということではありません).

・今話のアイキャッチはユリカでした. Bパートのアイキャッチのユリカ(上記画像参照), めっちゃかっこいいですね……. これは学園の生徒たちや, それに限らず同性からの人気が高いことも納得します. 足がながい!

・アイカツ!視聴前, あおいの口癖が「穏やかじゃないわね」ということだけはミームとして知っていて, しかし全然言わないので不思議に思っていましたがここで登場しましたね! いちごたちは普通であれば聞きなれないその台詞に違和感を感じていなかったので, ずっと前からあおいは「穏やかじゃないわね」と言っていたもののアニメには映っていなかったのでしょうね.

・フランケンシュタインの花嫁, ドラキュラの末裔であるユリカの影響をもろに受けた設定ですね. フランケンシュタインは原作がゴシック文学の代表作なので急造にしては良い設定だったかもしれません. ついでによくある誤解としてフランケンシュタインは怪物を産み出した人間の名であり, その怪物には名はありません. それを差し置いても, 実際に作中でフランケンシュタインが産み出した怪物は自身の花嫁となる怪物の製造を要求するので, いちごの設定は原作にそれなりに準拠したものになっています(もしかして原作を読んだのでしょうか?). 決め台詞は妖怪人間ベムのそれのようでしたが…….

・フランケンシュタインの花嫁衣裳のいちご, 一般おじさんからドン引きされてて草

・ところでユリカにはルームメイトはいないのでしょうか? ユリカの本当の姿を唯一知っている独占欲また人を自分に依存させたいという欲求が強く, 躁の傾向があり, 病んだ際にはユリカ様の本当の姿をキラキラッターの裏垢で晒してしまうようなルームメイトの存在が強く想定されましたが, どうやらいないようで残念です…….

・好きなことについてはついつい早口で本当に楽しそうに語る少女(SO CUTE)


  1. もっと根本的には, まず私は「分かった」と実感することが好きです. 直ぐに安易な(都合の良い)解釈ばかり求める悪癖に転化しますが……. ↩︎

アイカツ