学園の生徒の成長を測るスペシャルオーディションが近付くある日, 星宮いちごの担任のジョニー別府が今回のオーディションは重要なキーワードとであるという. いつものようにいちごは親友の霧矢あおいと紫吹蘭とチームを組み, そこに有栖川おとめと藤堂ユリカもチームに加わり一緒に練習に励む. そこに現れたスーパー1年生の北大路さくらは, いちごからチームに誘われるも1人だけプレミアムレアカードを持っていないことに引け目を感じている様子. しかしいちごたちは半ば強引にさくらを勧誘し, さくらに合うブランドを探し始める. それぞれお気に入りのブランドの衣装をさくらに勧めてゆくうち, あおいは北大路家が特集された舞台芸能の雑誌にあったさくらのインタビューを見返し, さくらがAurora Fantasyというブランドのファンであることを知る. Aurora Fantasyは童話の妖精や自然をモチーフとするブランドであり, そのトップデザイナーのグリーングラスは元絵本作家で全く人前に出ないことで知られていた. グリーングラスに会えるようさっそくジョニーに頼もうとするいちごだったが, さくらは自分にはAurora Fantasyのドレスが似合わないと言い切る. さくらは兄の左近が歌舞伎の稽古を始めて一人でいる時間が多くなった子供の頃にグリーングラスの書いた絵本に没頭しており, 何度も手紙を書いたが一度も返事を貰えていなかった. それからさくらは歌舞伎役者の家系の自分はAurora Fantasyのブランドイメージと合わないのだと考えるようになっていた. そのことを知ったいちごは, さくらを会う前に諦めては駄目だと説得する. ちょうどその時, あおいはHappy Rainbowのトップデザイナーである虹ケ原マコトがインタビューでグリーングラスと知り合いであることを語っているのを見つけ, いちごはちょうどマコトの所にプレミアムレアカードを貰いに行ったおとめに電話をする. そうしてさくらはグリーングラスに会うことができ, 筆不精で返事の手紙を書いていなかった代わりにさくらのために制作していたドレスのプレミアムレアカードを受け取り, いちごたちのチームに加わってスペシャルオーディションに合格したのだった.
さくらがプレミアムレアカードを貰う回でした. さくらは自分の歌舞伎役者の家系という出自と, Aurora Fantasyという西洋の童話や自然をモチーフにしたブランドはそぐわないと考えていたようです. いちごたちはさくらにAurora Fantasyのドレスはきっと似合うと感じていますが, さくらは返事を一度も貰えていないという事もあって自分が拒絶されていると感じてしまっている様子でした.
今回のテーマは話術, あるいは話術の心得にあった「会話のキャッチボール」だったかもしれません. さくらは一度も返事がないこと自体が自分にはAurora Fantasyに似合わないというグリーングラスからの返事であると思い込んでいます. 反応がない事に「反応がない」以上の意味を見出そうとするとどうやっても不安になってしまいますよね.
視聴中に何度もなぜさくらがそこまで悩むのか分からなくなりました. 例えばいちごがさくらから何故自分にAurora Fantasyが似合わないのか理由を尋ねる場面では北大路劇場が発動しますが, その理由は「やっぱりさくらは歌舞伎者, ほれちゃいけねえファンタジー」ということ, つまり大雑把には「イメージとそぐわない」ということのようでした. しかし多くの人は(いちごと同じように)「そんなことはない」と思ったのではないでしょうか? 今話を通じて, 自分が悩んでいることの重大さを外から眺めた時のギャップがよく現れているなと感じました.
いちごは返事を待っているままではさくらは後ろ向きなままであることを知っていて, だからこそさくらに直接会うことを勧めたのでしょう. さくらだって直接会って聞いてみたいという気持ちはあったのかもしれませんが, グリーングラスの素性は謎に包まれており, 他のトップデザイナーと比べて会うことが非常に難しいようです. しかし今回は先輩たちが大活躍してくれました. いちごがさくらをグリーングラスと会う様に説得し, あおいが徹夜までしてマコトがグリーングラスについて語るインタビュー記事を見つけ出し, おとめがマコトに頼み込む――いちごはさくらとグリーングラスのいる温室の前まで同伴もしていました――先輩たちがここまで自分を助けてくれてさくらは幸せ者ですね. そうしてグリーングラスに初めて会うことのできたさくらは, グリーングラスが筆不精で, ずっとさくらに会ってみたいと思っていて, 自分の為にずっとドレスを作ってくれていたことを知ります. ここで初めて会話が成り立ちました! 感動~!
さくらは孤独な時間が多く, まだ自他の境界も曖昧な子供の頃にグリーングラスの絵本にのめり込んでいたこともあり, Aurora Fantasyのことについてはかなり思い込みが強そうな印象を受けました. (私が子供の頃まさにそうだったのですが)童話にのめり込むうちに極端には「自分が想像したものは実際に存在する」という気持を抱くことがあって, その感情をそのまま放置しておくと根拠のない思い込みたちがよく考えられるようになった今もなお調べられることもなく自分を拘束しているという状況が起きます. さくらについてはグリーングラスが自分をブランドイメージに合わないと思っている, だから返事をしないのだ, という思い込みがそうでした. 誤解が解けて, プレミアムレアカードも貰えて, 本当によかったです.
31話以降も楽しみです. いちご母の正体がついに分かりますか……?
・「コール&レスポンス」を「コール&レタスポン酢」に間違えるならコールのこともコールスローと勘違いしていそうです.
・「おとめ担当の1年生は仲良し3人組で(スペシャルオーディションに)出るそうですよ」というおとめの台詞がありましたが, まだトレーナーの制度は続いているのですね! いちごとあおいには編入当時トレーナーにあたる先輩がいなかったので, このトレーナーという制度は1年1学期の期間で設けられているのでしょうか.
・「ひのき舞台正月特大号」まで買っていたら, あおいのアイドル雑誌での毎月の出費はいったいどれほどになることやら……. 学園の経費から落ちたりしないのでしょうか?
・いちごと蘭, おとめがあおいが開いた雑誌「ひのき舞台」を覗き込んでいるのに対してユリカが一歩引いているのがユリカらしいですね. おそらくユリカはさくらが余りそのインタビューの内容を知られたくないと思っていると察知したのではないでしょうか.